こどもアバター研究室No.3: 未来の裁判をやってみよう。
こんにちは。はたけやまきみえです。
こんかいは、長島光一(ながしまこういち)先生と帝京大学(ていきょうだいがく)のみなさんが、いまよりもっとリアルにバーチャル空間(くうかん)に入り込んで楽しめるゲームで起こった、ちょっと未来(みらい)の事件(じけん)を想像(そうぞう)してやってみた模擬裁判(もぎさいばん)に行ってきました。
もしこんな事件が起こったらどうなるか、みなさんも裁判官(さいばんかん)になったつもりで、考えてみてください。

Kくんは、大人気(だいにんき)のゲームで遊んでいました。このゲームでは、自分の体の動きがゲームのキャラクターと同じように動くので、とてもリアルな体験(たいけん)ができます。
ゲームを始めるとき、Kくんは自分の体のデータや写真を登録(とうろく)し、自分の好きなキャラクターを選(えら)んで遊んでいました。ところが、ある日、ゲーム会社(かいしゃ)がルールを変えてしまい、「これからは自分にそっくりなキャラクターしか使(つか)」えません」と言われました。
Kくんは仕方(しかた)なく自分そっくりのキャラクターで遊び続(つづ)けましたが、ゲームの中でひどい目にあいました。自分そっくりのキャラクターがいじめられたり、ボコボコにされたり、殺されたりするのを見て、Kくんはとても傷(きず)つきました。さらに、「現実(げんじつ)の世界でも同じことをされるかもしれない」と不安(ふあん)になり、学校に行けなくなってしまいました。
Kくんは、「こんなひどいことをするゲームの会社が悪い!」と思い、2つの裁判(さいばん)を起こしました。

K君 vs ゲームを作った会社
K君は、「人の心を傷つけるこのゲームは不良品(ふりょうひん)です。ゲームを作った会社は不良品を作った責任(せきにん)があります。損害賠償(そんがいばいしょう)として、300万円を請求(せいきゅう)します。」と主張(しゅちょう)しました。
ゲームを作った会社は「私たちはゲームの運営会社(うんえいがいしゃ)の指示通(しじどお)りにゲームを作っただけです。まちがったゲームの遊び方を決めたのはゲーム運営会社なので、私達が悪いのではありません。いじめがおこったのも、ゲームが悪いのではなく、中で遊んでいる人がまちがった使い方をしただけです。」と言い返しました。
意見(いけん)が対立(たいりつ)しました。さらに話し合いが進(すす)んだ結果(けっか)、ゲームを作った会社が歩(あゆ)み寄(よ)りました。
「ゲームが不良品だったとは思いません。でも、私たちが作ったゲームで傷ついたことは事実なので、誰にいじめられたかをゲームの中で探すのをお手伝(てつだ)いします。ですから賠償金(ばいしょうきん)」は減(へ)らしてもらえませんか?」

【裁判2】
K君 vs ゲーム運営会社(うんえいがいしゃ)
K君は、「勝手(かって)に本人そっくりのキャラに変更(へんこう)したのはプライバシー侵害(しんがい)です。ゲームのなかで、傷つけられたされたせいで家から出られなくなってしまったことに対して750万円、プライバシーを侵害されたことして50万円を請求したい。」と言いました。
ゲーム運営会社は、「わたしたちは、ゲームを作り替(か)える前にちゃんと説明(せつめい)をしました。途中(とちゅう)でルールが変わることがあることも伝えました。K君はゲームをする前にルールに同意(どうい)するというボタンをクリックしています。新しいルールになってからもK君は私たちのゲームで遊んでいましたよね?それは、新しいルールを受け入れたということではないのですか?うちの会社は、ゲームの中でのいじめを防ぐしくみも作っています。」と言いました。
K君、ゲームを作った会社、ゲームの運営会社がそれぞれ証拠(しょうこ)を見せました。
K君は、病院(びょういん)からもらった病気(びょうき)の診断書(しんだんしょ)を見せました。
本当の裁判と同じように、今回、結論(けつろん)は出ませんでした。
そのあとみんなで話し合いました。いろいろな意見が出ました。
・K君はゲームを始めるときにゲームのルールにOKしただけで、自分そっくりのキャラしか使えなくなるルールになるときは運営が勝手にやったからそれが問題だ。
・Kくんの病気の診断書があやしい。本当に病気なのか?本当に病気だったとして、病気の理由がゲームだけだと、どうして分かるんだろう?
さて、だれにどんな問題があったと思いますか?ゲームのルール変更が嫌だなと思ったのに遊び続けたK君でしょうか、問題が起こりそうなゲームを注文通り作った会社でしょうか。問題が起きそうなゲームをきちんと対策(たいさく)せずに運営していた運営会社でしょうか。
答えは簡単(かんたん)ではありません。オンラインの中で起きたことが、現実世界(げんじつせかい)とつながって、大きなダメージを与えてしまうことが、未来は増(ふ)えるかもしれません。
そんなことができるだけ起きないように、安心・安全にアバターを使えるような未来を私たちの研究で作りたいと思います。