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「メディアコミュニケーションのリデザイン」講演会(第3回ReMediCom講演会)を開催します。

「メディアコミュニケーションのリデザイン」講演会(第3回ReMediCom講演会)のお知らせ

 本講演会「メディアコミュニケーションのリデザイン(ReMediCom)」では、新しいメディアの登場やコロナ禍の影響によってコミュニケーションが変化しつつある状況を踏まえて、自由で多様なコミュニケーションのあり方を探求してきました。
 この度、ムーンショット型研究開発事業(目標1)で開発が進められる「サイバネティック・アバター」の可能性と課題について、歴史的視野の下で検討を行うために、西洋哲学史を専門とされる中畑正志先生と、情報技術史を専門とされる喜多千草先生を講師としてお招きし、ご講演いただきます。
 ご関心がおありの方はぜひご参加ください。
※「サイバネティック・アバター」とは、「身代わりとしてのロボットや3D映像等を示すアバターに加えて、人の身体的能力、認知能力及び知覚能力を拡張するICT技術やロボット技術を含む概念」です(内閣府ムーンショット型研究開発事業ウェブサイト https://www8.cao.go.jp/cstp/moonshot/sub1.html より)。

講師     :中畑 正志 (京都大学 名誉教授)
        喜多 千草 (京都大学 教授)

コメンテーター:久木田 水生(名古屋大学 准教授)
        藤川 直也 (東京大学 准教授)

オーガナイザー:呉羽 真  (山口大学 講師)

開催日時   :2024年3月24日(日) 13:30-17:00

開催方法   :現地会場とオンラインのハイブリッド
        現地会場:キャンパスプラザ京都 6階 第8講習室 (アクセス:https://www.consortium.or.jp/about-cp-kyoto/access
        オンライン:Zoomミーティング(要参加登録)

プログラム  :
 13:30-13:45 趣旨説明(呉羽 真)
 13:45-15:15 講演①:中畑 正志「In medias res ──媒介者としての「メディア」を歴史的に考える(仮)」
 15:30-17:00 講演②:喜多 千草「疑似ローカル・同期のプレゼンスとしてのCA」

参加費    :無料

参加登録方法 :オンライン参加を希望される方は、2024年3月22日(金) 17:00までに、以下のURLから  
        Googleフォームにてお申し込みください。
        お申込みいただいた方には、後ほどメールにてZoomのログイン情報をお送りします。
        フォームURL:https://docs.google.com/forms/d/1MuFwi068arM-9opJzOSBjSK3l4tXpoyUfDaIAZ_0hO8/
        現地会場での参加を希望される方は、事前申し込み不要です。

講演要旨   :

①中畑 正志「In medias res ──媒介者としての「メディア」を歴史的に考える(仮)」
 「メディアコミュニケーションのリデザイン」という全体的課題のもとで、「サイバネティック・アバター」をテーマとして、それを歴史的な視点から考えてみること。──これが私に与えられた役割である。アリストテレスのこのテキストはこちらの写本に従って読むべきではないか、といったことに頭を悩ましている私には、かなり遠い分野の話ではあるが、ここは素直に、私に可能な範囲でこの役割を果たすことにしたい。
 「メディアコミュニケーションのリデザイン」という全体的課題と「サイバネティック・アバター」という今回のテーマとの関係は少しわかりにくいが、おそらく両者を繋ぐ概念は、「メディア」だと推察する。サイバネティック・アバターによって、遠隔操作と複数の作業の同時実現が可能なのは、行為者とそれが対象とする「現実」との間に、仮想空間の自分のアバターをはじめとした多くの媒介項が介在することにもとづいている。この媒介性を表わすことばが「メディア」である。
 「メディア」という概念を歴史的にみたとき、その語源であるラテン語形容詞mediusや名詞mediumは、中間、中心、中途などを基本的な意味として、そこからさまざまな場面で中間として表象される事象に用いられるようになった。このラテン語をそのまま取り入れた英語においても、事情は同様である。そして「メディアコミュニケーション」に含まれる「メディア」の意味に近い用法の最初期の用例は、OEDなどによれば、フランシス・ベーコンの『学問の進歩』(1605)の言葉(ii. xvi. 2 “But yet is not of necessitie that Cogitations bee expressed by the Medium of Wordes.”)である。ベーコンは、伝達の道具として、話すこと(speech)と書くこと(wirting)を挙げ、またアリストテレスの言語論を(批判的に)引用しつつ、思考が必ずしも言葉(words)というmediumによって表現されるわけではないことを主張している。
 この語源的探索は、ベーコンのこの議論を媒介として、mediumをめぐる考察が古代の哲学者たちの思考へとさらに遡源できることを示唆する。事実プラトンやアリストテレスは、伝達の媒体の性格や役割、人間の思考との関係に注意を払った。とりわけプラトンは、以上のような意味でのメディアを、言わば文化の総体として理解した。そしてオーラルな文化からリテラルな文化への移行という媒体の変化を背景としつつ、この媒体が人間の生き方に包括的に、そしてある意味では「直接的に」かかわることの問題性を論じている。
 こうした議論を出発点に、行為の主体と対象に介在するメディア、そしてそれと思考との関係について、通常のメディア史やメディア論史とは異なるかたちで話題を提供したい。

②喜多 千草「疑似ローカル・同期のプレゼンスとしてのCA」
 CAは、テレプレゼンス(ミンスキー, 1980)、テレイグジスタンス(舘, 阿部, 1982)を淵源とする遠隔でのプレゼンス技術の流れの嫡流に属すると考えられる。また、第二次世界大戦中に遡る人間ー機械混成システムから、サイボーグにいたる問題関心とも深く関わる上に、メディアを介したコミュニケーションの観点からは、電気的なコミュニケーションがもたらした場所性の喪失や、多様な自己呈示を可能にするメディアといった論点群にも接続している。本講演では、そういった論点群の見取り図を示した上で、「疑似ローカル・同期のプレゼンスとしてのCA」と場との関係についての視点を提供する。

主催     :ムーンショット型研究開発事業目標1「アバターを安全かつ信頼して利用できる社
        の実現」(PM:新保史生, プロジェクトウェブサイト:https://avatar-life.jp/ja/
同      :「誰もが自在に活躍できるアバター共生社会の実現」(PM:石黒浩, プロジェクト
        ウェブサイト:https://avatar-ss.org/
※本講演会は、日立財団 2021年度(第53回)倉田奨励金「メディアコミュニケーションのリデザイン――〈身体性〉・〈言語〉・〈環境〉に着目した応用哲学的探究」(代表研究者:呉羽真)の支援の下、第1回(バーチャル美少女ねむ氏講演会)、第2回(鳴海拓志先生講演会)を開催しました。今回は、ムーンショット型研究開発事業目標1のプロジェクトの支援の下、サイバネティックアバターに関する諸問題を重点的に検討します。

お問い合わせ先:呉羽 真(kureha@yamaguchi-u.ac.jp